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面接官は就活生との面接で様々な質問をすることで、あなたがどのような人物であるかを判断しようとします。エントリーシート(ES)や適性検査などのテストで、自社の求める基準以上の能力があるか判断した後は、面接を通して自社の社風や仕事に合う人物なのか、活躍してくれそうな人物なのかを判断しようとします。面接における「自社に合う、合わない」は業種や業界によって様々ですから、一概に「こういう受け答えをしたら絶対に受かる」というセオリーはありません。しかし、比較的高い確率で面接官に刺さりやすいエピソードというのは確実に存在します。それは「今までの人生の中で突き抜けた(または突き抜けようと努力した)」エピソードなのです。
企業人事が判断したいのは「問題解決能力」の有無
そもそもの基本に立ち返って考えてみましょう。就活生の皆さんは、晴れて新入社員として入社したのち、何をするのか。それはもちろん、「仕事」ですね。営業職であれば「お客様に必要なものを提案・販売する」。システムエンジニアであれば「企業が必要としているシステムを構築し、提供する」。コンサルティング職であれば「企業の抱える課題を分析し、ソリューションを提供する」。お気づきかと思いますが、「仕事」とは何らかの形で「顧客の課題・問題を解決すること」を伴うことが多いのです。
また、バブル崩壊後は「IT革命」「リーマンショック」「人口減少による国内マーケットの縮小」「自然災害」「途上国の台頭」など数十年前と比べ企業が置かれている状況は大変厳しいものとなり、変化の速度がさらに早くなっています。
そういった中で、会社が本当に必要としている人材とは「課題や問題を解決する能力が高い(高そうな)」な学生なのです。先が見えず混沌とした時代だからこそ、課題や問題をいち早く察知し解決できる能力が高い人材というのは、どの企業も喉から手が出る程欲しいのです。
多くの場合、例えばエンジニアとしてのスキル、営業としてのスキルなど、職種ごとの専門スキルは入社後、身につけていくものです。そういったスキルを就活生の皆さんがどれだけ持っているか確認することに意味はありません。しかし「問題解決能力」というのは、前述の通り、ほとんどの職種において大なり小なり必要とされる能力であるだけでなく、学生時代からも培うことが可能な能力ですのでその有無を確認することはある程度可能です。
例えば、
・部活で準レギュラーだったが、努力してレギュラーになった
・学費の一部をバイトで貯めなければいけなかったが、学業と両立させた
などといったことも立派な問題解決です。これは学生時代からも培える能力である、ということがお分かりいただけると思います。
面接時における問題解決能力を物語る「突き抜けた」話の伝え方
実は部活や、大学のサークルで「部長をやっていました!」「副部長をやっていました!」という話は、人事側は「またか・・・」ということが多いのです。もちろん、部長や副部長を務め、人をまとめる力や交渉力があることをPRして頂くのはおおいに結構です。しかし、どこかで聞いた話、というのは否めず、それだけのエピソードでは人事の心には響きにくいのです。
「突き抜けた話」というのは、何かひとつのテーマや物事について「再現性のあるプロセス」つまり「まぐれ」ではないプロセスをたどって、何か結果や成果を残したことを示すことです。それは、部活の大会で優勝した、サークルのイベントを大成功させた、というような大きな話でなくていいのです。
「突き抜けた話」の具体例
ここで、ある学生の例をあげてみましょう。
‟和食居酒屋のアルバイトで外国人観光客が増えていくにつれ、英会話での接客が必要となった。理系の大学ということもあり語学は苦手だったが、どうしても英会話での接客が必要となり、学業とアルバイトの合間を縫って中学レベルの簡単な英単語・英会話を1日1時間「スタディサプリ」というアプリを使い自宅で勉強し直した。勉強していくにつれ、単語の知識が著しく低いことに気づき「英単語を500種類覚える」を目標に勉強し続けた結果、500種類の英単語を覚えることに成功した。
勉強していくうちに英語での接客に苦手意識がなくなり、英語も日常会話程度なら問題なく話せるようになった。もっと英語がうまく話せるようになりたいと思い「スタディサプリ」を続けつつ、週1度スカイプを使ってネイティブの先生相手に英会話レッスンを受けるようになった。ますます英会話に魅力を感じ、ネイティブに近づけるよう発音も毎日声に出して練習するようになった。
英語力に自信がついてくると、今度は自分の語学力を試したいと思いはじめ積極的に海外のお客様に話しかけられるまでに成長した。結果「〇〇なら英会話ができる!」とアルバイト先で評判になり、海外からのお客様のおもてなしや接客を任されるようになった。英語に抵抗がなくなったので、アルバイトで稼いだお金をためてアメリカに短期留学し更に海外文化や言語が好きになった。現在は、TOEIC800点突破に向けて勉強している。“
部活の大会で優勝、サークルのイベントで大成功というほど華々しいエピソードではありませんが「自身の課題を地道な努力で克服・解決した」という事例が盛り込まれています。企業の人事からすると、大変魅力的なエピソードであり「突き抜けた話」として理解しやすい事例です。
「突き抜けた話」で押さえるべき4つの留意点
「突き抜けた話」をするにあたり、注意して欲しい点があります。先ほども申し上げましたが突き抜けたかどうかが「まぐれ」の場合、「それは君がただ単に運がよかっただけでしょ?」と、人事担当者に認識されかねません。また、自慢話や自分を大きく見せる話も悪印象となりNGです。突き抜けた話のエピソードを語る場合は以下の4点に注意して話をまとめるように注意してください。
問題や課題を何と定義(仮定)したのか?
⇒先ほどの例ではアルバイト先で海外のお客様が増えたが「英語が話せない」ことが課題であったと定義されています。
どのような環境で取り組んだか?
⇒学業とアルバイトが忙しかったが、1日1時間と決めて自宅でアプリを使い学習したことがこれにあたります。
課題に対してどのようなPDS(計画・実行・振り返り)サイクルを回したか?
⇒日々の学習に加え、英単語の知識のなさに気づき、500種類の英単語を覚える目標を設定し目標達成しています。また、週1回の英会話レッスンを受けるようになりました。
最終的にBefore/afterでどのような成果の差を生んだか?
⇒全く英語が話せなかった学生が、アルバイト先で海外のお客様対応を任されるようになっただけではなく、短期留学まで経験しTOEIC800点を目指せるまで成長しています。
「突き抜けた話」の具体的な話し方
一番重要なのは面接官に自分自身が抱えていた「問題や課題」について具体的に提示することです。上記の例では「アルバイト先で英語が必要になった」ということで具体的な問題を面接官に伝えています。この問題定義をしっかり行う事こそが、突き抜けた話をする上で重要なポイントとなります。
その上で自分がどのようにその問題解決に向けて行動を起こしたのか、行動を起こしていく中で自分の何が弱みだったのか、その弱みをどのように改善し克服したのかを具体的に話すようにしてください。そして、その結果どのような成果が得られ自分がどのように変化したのかを、時系列順に面接官に伝えられれば尚良しです。また話をするときには、具体的な数字などの「強い事実」も併せて伝えられると、より信憑性とわかりやすさが増し、面接官を唸らせることができるでしょう。
突き抜けた話をするときは「結果」だけを話すのではなく、問題定義~改善策~成果・結果を話すことを忘れないようにしてくださいね。この時に自分を大きく見せようとする必要はありません。「自分はこんなにすごい人間なんだ」とPRすることよりも「こういった課題や問題があった」が「こういった努力をして」「結果このように成功した」という事実を謙虚に語ることが重要です。
まとめ
面接時には「すごいことを成し遂げたこと」や「奇抜なアイデア」を、面接官にPRしなければならないような気がしますよね。しかし面接官や企業が欲しい情報は、あなたの凄さや奇抜なアイデアではありません。面接官が本当に聞きたいことは「今までの人生の中で突き抜けた(または突き抜けようと努力した)」エピソードなのです。
さらにそのエピソードは「大きなこと、派手なこと、立派なこと」でなくても良いのです。小さなことでも、あなたの人生の中で「課題」と感じたことを、どのように「定義」し、それを乗り越えるためにどのような「努力」をして「成功または成長したのか」を、誠実に伝える事こそが「今までの人生の中で突き抜けた(または突き抜けようと努力した)」エピソードになります。
みなさん、何か一つでいいので自分の人生をふりかえって突き抜けたエピソードを探してみてくださいね。きっとなにかあるはずです。