「どんな人と働きたいか」 ~「人」軸で就職先を選ぶ~

就活中の皆さんは最終的な就職先を選ぶ際、どんな会社を選びますか?業種、職種、働く場所、などなど観点は様々。しかし、とても重要でありながら見過ごされがちな観点があります。それは「どんな人と働きたいか」。つまり「人」軸でも会社を検討するということ。今回はそれについて掘り下げてみましょう。

働く人

現在の自分の友人を複数思い浮かべてみてください。自分の周りにはどのようなタイプの方が多いですか?「気が合う」「趣味が合う」「居心地がいい」「話が合う」など、なんとなく自分に似たタイプの「人」が多くありませんか?逆に「自分と雰囲気が全然違う」「全然話がかみ合わない」などの場合、仲の良い友人にはなかなかなりにくいですよね。しかし、社会人となり仕事がスタートすると「自分の気の合う人」とばかり仕事するわけではありません。中には今まで出会ったことのないような人と一緒に仕事をしなければならないことも多々あります。思い描いていた理想とする上司や同僚と現実が大きく違うといった事態は是非避けたいところですよね。

よくある企業選びの軸と見過ごしがちな「人」の軸

皆さんが企業選びをする場合の軸はなんでしょうか。「業界、知名度や規模、福利厚生などの制度、安定度、成長度、仕事内容、成長度、給与体系」と自分の適性を照らし合わせて就職活動をしているかと思います。もちろんこれらは間違いではありません。しかしここに「どんな人たちと働きたいのか」という軸を一つ設けると更に良い就職活動ができるでしょう。

一日の大半を過ごす「会社」という場所

実はこの「どんな人と働きたいか」という観点は、最重要であると言っても過言ではありません。社会人になると1日8時間、もしくはそれ以上の時間を会社で過ごすことになります。寝る時間を約8時間と考えると、目覚めている時間の半分以上を会社で過ごすわけです。その貴重な時間を一緒にすごす「人」がどのような人達なのかを就職活動時に見極めることは、就職後に活躍すること、あるいは思ってもいなかった早期退職・離職を防ぐ重要な要素です。

社会人の退職理由の最上位は「人間関係」

実は社会人の退職理由の最上位が「職場の人間関係の悪化」という事実もあります。仕事内容や業界問わず「上司と合わなかったから辞める」「同僚との関係が悪化したので退職した」という理由は後をたちません。それほど、一緒に働く「人」はとても重要な要素であり、就職活動をする上で大切な軸なのです。

出典:エン・ジャパン人事のミカタ https://partners.en-japan.com/special/old/160203/2/

なぜ人を軸にして企業を選ぶことが重要なのか

新卒で入社した場合、特に、ビジネスマナーや仕事の進め方、業界の知識や専門知識などを0から覚えていくことになります。そうなると、前提がない分、「上司」や「同僚」から大きな影響を受けやすいのです。どんなに有名な企業でも、志望動機が高かった業界でも「考え方の合わない上司」「やりづらい同僚」が多くいた場合、仕事そのものに対してネガティブな印象を抱いてしまう可能性が高いです。逆にどのような仕事内容、業界でも「相性の良い上司」「仕事を一緒に進めやすい同僚」が多くいれば、活躍しやすく、結果として仕事に対してポジティブな印象を抱くことができ、その後の社会人人生に大きなプラスになるでしょう。極端な話、入社時に業界そのもの・職種そのものに興味がなかったとしても、人を大切にする社風で居心地がよく、自分が活躍できる会社であれば仕事は必然的に楽しくなるものです。

例を出してみましょう。同じ業種、同じ営業職でも…

A)うちの上司は、普段から「お客様に何ができるのか」を考え、顧客を起点に会話をしている。提案商品する際、「そのお客様には何がベストなのか?」を問いかけてくる。こういう問いかけは、この会社ではそこかしこで行われている。

B)うちの上司は、「売上目標の達成」を毎日の朝会で強調し、日々の行動について「売上目標の達成のためにはどういう行動がどれぐらい必要か」を明確にすることを求めてくる。こういうやりとりは、この会社ではそこかしこで行われている。

どちらが良い・悪い、というわけではありませんが、それぞれの環境が異なる、ということは確かでしょう。こうした「何を大切にするかという価値観」「価値観にひもづくコミュニケーションの取り方」というのは会社によって大きく異なります。そしてその会社に属している社員は知らず知らずのうちに大なり小なり影響を受けるものなのです。

従業員数が少ない場合はより影響が大きい

従業員が数百名、数千名の大企業であれば嫌な上司や同僚がいたとしても、同じだけ魅力的な上司や同僚がいるかもしれません。しかし、企業規模が小さく従業員数が少ない企業の場合はひとりひとりの思考や性格が、組織全体の雰囲気に大きな影響を及ぼしている場合があります。パワハラ気質の上司が活躍している場合、会社全体がそういった雰囲気であったり、逆に新卒を全く気にかけず、育てる風土が根付いていない場合は入社後放置されたりする可能性もあるでしょう。従業員数が少ない会社を志望している場合は特に「どんな人が働いているのか」という観点は重要性を増します

大企業の場合でも風土や社風で人を判断せよ

大企業の場合でも会社の「体質」を見極める必要があります。自分は意見をどんどん言っていきたいのに、「基本的にトップダウン」という気質の企業に入社してしまったら、大きなストレスになることもあるでしょう。また、人と人との対話を大切にして生きてきたのに、社内では全く会話がなくコミュニケーションは全てITツールを介して…といった場合もギャップを感じて苦しくなってしまうかもしれません。「どんな人と働きたいか」と一口に言っていますが、企業の風土や体質も人を見極める軸の一つの項目として位置付けてください。

企業の「人」をどのように見極めればいいのか?

では、企業の中にいる「人」をどのように見極めていけばいいでしょうか。ひとつは、その会社が大切にしている「理念」や「社是」など社員に向けたメッセージを知ることです。あなたが「人や人との関りを大切にする会社に就職したい」という軸を持っていると仮定します。そういった場合は下記のような理念や社是を掲げている会社を探してみましょう。

従業員は自分の生活をエンジョイするために働いている「HONDA」

「従業員は、自分の生活をエンジョイするために働きにきているはずだから、働きがいのある職場をつくらなければ、従業員は喜んで働かないし、いい仕事はしない」という本田宗一郎の言葉を根底に経営理念を作っているHONDAは、会社の運用方針のひとつに「仕事を愛しコミュニケーションを大切にすること」という言葉を盛り込んでいます。これは、人と人とのコミュニケーションを大切にすることというメッセージをしっかりと言葉で表していますよね。

全従業員の物心両面の幸福を追求する「京セラ」

京セラの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」と、従業員の幸福を一番はじめに挙げています。「お客様のために、顧客のために」という経営理念が多い日本企業の中で、従業員の幸福を一番に掲げる企業はそう多くありません。もしあなたが、人を大切にする会社で働きたいと思っているならば、心に響く経営理念ではありませんか?社員を大切にしている、という社風や風土がこの言葉から見て取れます。

大企業でなくとも人を大切にする企業がたくさんある

「会社の目的は社員の幸せを通して社会に貢献すること」を経営理念とした伊那食品工業株式会社や、「自分と自分の愛する家族の幸せのために働ける、世界一社風のいい会社を目指す」株式会社ISOWAなど、中小企業でも「社員ファースト」の会社は世の中に多くあります。往々にしてこのような会社は「人」を大切にし、人を育てる風土が出来上がっているので働きやすく、勤務年数の平均も長い傾向にあります。

このように企業が発信しているメッセージをしっかりと調べ、共感できるものを探し、その上でOB・OG訪問や先輩社員訪問、人事との面談で「本当に会社の理念通りの働き方ができているのかを見極めること」が企業の「人」を知る鍵であり就職活動における一つの軸にもなります。

まとめ

福利厚生制度や給与、業界や職種などで志望企業を絞って就職活動をされている方が多いと思いますが、意外に見落としがちなのが「どんな人たちと働きたいのか」という軸です。人を見るには、企業が発信している「経営理念」や「社是」を調べること、そしてその企業の中で働いている人が本当にそのメッセージどおり、生き生きと働けているかどうかを見定める事が必要です。

それには、OB・OG訪問をはじめインターンシップへの参加や、企業内見学を積極的に行い実際の自分の目で働く人の表情や言葉を見聞きすることが一番重要です。インターネットが普及し必要な情報がすぐに手に入れられる時代だからこそ、目先の情報だけにとらわれず自分の目でしっかりと精査してください。そのひと手間が就職活動を成功させる秘訣です。