絶対に間違えない売り手市場における就職活動の進め方

ここ数年「超・売り手市場」と採用市場界隈では叫ばれ続けています。「売り手市場」と聞くと「自分たちが優位」や「どんな企業でも内定できる?」と勘違いしてしまいそうですよね。しかし、実際のところはどうなのでしょうか?今日は、データなどを元に「売り手市場」の実際について考えていきたいと思います。

売り手市場は果たして本当に売り手市場なのか?

1.売り手市場とは

物を買う、サービスを受けるなど売買が発生する際に「売り手」と「買い手」という言葉を耳にすることがあると思います。商品を売る・サービスを提供する側を「売り手」と表現し、商品買う・サービスを受ける側を「買い手」と表現することは皆さんご存知かと思います。

実は就職活動の場においても、就活市場を表現する際に「売り手」「買い手」という表現を使います。上記の例を挙げて考えてみると、就活生の皆さんは企業に労働力を買ってもらう「売り手」となり、企業は労働力を買う「買い手」となるわけです。

2.本当に売り手市場なのか?

大学の求人倍率が7年連続で上昇し、38.1万人が企業にとって未充足となっています。就活生全員が就職しても、まだ40万人分以上のニーズがある状況です。また、中小企業は求人倍率が9.91倍となり、中小企業においては過去最高の人材採用難に陥っていると言っても過言ではありません。しかし、実際のところは企業によっては大きく偏りがあり、一部企業においては買い手市場の部分もあります。例えば従業員規模5,000人以上では求人倍率0.37倍。いわゆる大手企業においては、まだまだ採用予定数に対して希望者数が3倍近くにのぼるという状況です。また、前年比でも0.02ポイント低下しており、大手企業への内定獲得競争はより熾烈になっていると言えます。
(出典 リクルートワークス研究所:http://www.works-i.com/pdf/180426_kyujin.pdf)

3.業種別にみた採用求人倍率

また、同じような見方は、業種別でも当てはめられます。下記に業種別の倍率を記載します。

・流通業:12.75倍
・建設業:9.55倍
・製造業:1.97倍
・サービス・情報業:0.45倍
・金融業:0.21倍

このデータを見てわかることは、人気・不人気の業種に非常に大きな偏りがあることです。サービス・情報業においては、企業の採用予定数に対して2倍強の学生が就職を希望し、金融業においては同じく5倍近くの学生が就職を希望しているという構図です。もしあなたが金融業やサービス・情報業を目指しているのであれば楽観は厳禁、非常に厳しい競争が待っていることを頭に入れておかなければなりません。
(出典 リクルートワークス研究所:http://www.works-i.com/pdf/180426_kyujin.pdf)

売り手市場における就職活動の現状

1.売り手市場の学生のメリット

前述したとおり「売り手市場」と言いながら、業種・職種によっては厳しい状況であることは、データが語っております。しかし、総論として、空前の売り手市場であることは間違いありません。それ故、学生の皆さんが受けるメリットが多いことも事実です。

例えば「早期に内定がでやすい」「優秀な学生を獲得したいため、企業側が募集条件の改善に取り組む事例が多い」「様々な企業からのオファーが増えるため、就職先の選択肢が増える」などが、大変わかりやすい大きなメリットです。

2.売り手市場のデメリット

では逆に、売り手市場であるが故のデメリットはあるのでしょうか。例えば「ミスマッチ」は、売り手市場に起こりがちなデメリットの一つです。業種によっては内定が比較的簡単に出てしまうため、学生側も深く考えることなく内定を承諾し入社した結果「こんな仕事だと思わなかった」「イメージと全然違った」等の事例も出てきてしまっています。また、多くの企業から内定がでると「自分にはもっと合う職種があるのでは?」と軸がぶれてしまい、結果3月になっても一つも内定を持っていないという事例も耳にします。
事前に見極めることが難しい、という事情もありますが、こうした事態は何とか避けたいものです。

就職活動の早期化がもたらす影響とは

1.​多くの企業と早期に接触できる
空前の売り手市場のさ中、各企業が戦略として打ち出しているのが「採用活動の早期化」です。経団連の倫理憲章は2020年卒の新卒採用活動においては、6月に面接解禁、とうたっていますが、それを遵守しているのはいわゆる超大手と呼ばれる一部の企業のみ。中小企業やベンチャー企業など、その他の企業は採用活動をどんどん早期化しているのが実態です。説明会のピークは通常、大学生においては3年生の3月ですが、その前年から説明会を行ったり、夏・秋・冬と年に数回インターンシップを実施したり、学生と早期に接触を図り、内定まで囲い込むという企業も珍しくなくなりました。これは、学生の皆さんにとっては企業の実態を理解するのに役立つ機会を早期に、かつ複数得られるという意味で、とても大きなチャンスと言えます。
インターンシップに参加することで、会社内部を知ることができますし、早い段階で会社説明会に参加することでより多くの業種・職種の実情を知ることができるからです。

2.​軸ができる
インターンシップや説明会に数多く参加することで、実際に自分の目や耳で直接情報を得る機会が増えます。そうすることで、就職先を検討する際の判断の軸が自分の中でだんだんと定まってくるはずです。仕事や業務内容だけでなく、会社の雰囲気や風土、先輩社員の顔つきや空気感を肌で感じることで「社員が暗い会社はNG」「女性が活躍している会社をメインに見ていこう」など、軸がクリアになっていきます。

本採用解禁などの「山場」前に体験をふりかえり優先度をきめよう

1.​体験を振り返る時間を持とう
企業の採用活動が早期化していると申し上げましたが、やはり経団連が定めた倫理憲章の採用解禁後が就活の山場、と考える方も多いでしょう。そのタイミングに限る必要はありませんが、自分の中で「山場」と決めている時期があれば、それまでインターンシップや中小企業・ベンチャー企業などの説明会などに参加して感じたこと、定まりつつある軸などを事前にしっかり整理する時間を設けると良いでしょう。

就職解禁などの山場前に自らが希望する職種、企業風土、働き方を整理しておくことでスムーズに就職活動に入ることができるのです。

2.​優先度を決めよう
体験を振り返るときに併せて行いたいのが「優先度を決めること」です。自分が社会人になったときに「やりがい」を求めるのか「勤務時間の短さ」を求めるのか、はたまた「専門的な知識を身に着けたい」のかなど、優先度は人によって違います。優先度を整理し順位付けすることで、選考実施時期には自らの優先度の高い企業を特定できたり、選考時に志望動機を明確にできたりするなどのメリットがあります。

企業側のアクションも活発化されている

空前の売り手市場のさなか、企業側もさまざまなアクションを起こしてます。会社説明会の他、先輩社員による座談会や昼食会、選考回数を減らす取り組み、出張選考を実施する、
地方から首都圏に選考に来た学生には交通費を支給する、OB・OG訪問を増加させる、リクルーター制度の導入、リファラル採用など、企業によりアクションは様々です。

自社の説明会を実施し、テストや面接だけで新卒採用を行っていた時代と違い、近年は企業側が積極的に自社を知ってもらおうと努力する時代に変わりました。また、そのような取り組みを実施する企業が増えることで、就活中の学生の皆さんが様々な角度で「企業」を知る機会が増え、「それまで名前も知らなかったけれども実は良い企業」との出会いの機会も増えるのではないでしょうか。

まとめ

売り手市場だからといって、どんな業界・業種でもスムーズに就職活動が進むとは限りません。また、しっかりと事前準備や調査をせず安易に内定を承諾してしまったり、就活のさなか軸がブレてしまい、結局どこも内定をもらえなかったりするケースも実際に起こっています。

企業の採用活動が早期化し、活発化することは「様々な企業を早い段階で見ることができる」ことにつながり、自分の就職活動における軸の整理・優先度の順位付けをすることが可能です。

そのチャンスを充分に活かし、自分にとってよりよい納得のいく就職活動をしていきましょう!